サブカルテとは何か?
歯科医院で日常的に使われる「サブカルテ」という言葉ですが、その役割を正確に説明できる方は意外と少ないかもしれません。
そもそも歯科医院で扱われる診療記録は、大きく分けて二つに分類できます。一つは歯科医師法第23条で作成が義務付けられている正式な「主カルテ(歯科診療録)」、もう一つが主カルテを補完する位置づけにある「サブカルテ(診療ノート)」です。
両者の違いを整理すると、以下のようになります。
▼主カルテとサブカルテの比較
| 比較項目 |
主カルテ(歯科診療録) |
サブカルテ(診療ノート) |
| 定義 |
歯科医師法第23条で作成義務が定められた正式な診療記録 |
主カルテを補完する目的で、診療プロセスや所見の詳細を記録する任意のノート |
| 法的位置づけ |
法令で作成・保存が義務付けられた公的書類 |
法令上の作成義務はなく、医院の運用に委ねられる補助的な書類 |
| 保存義務 |
完結の日から5年間(歯科医師法施行規則第22条) |
法的な保存義務はない(医院判断) |
| 様式 |
保険請求に必要な項目を備え、ほぼ定型化されている |
自由形式(医院ごとに様式・運用が異なる) |
| 主な記入者 |
歯科医師 |
歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付スタッフなど診療に関わる多様なメンバー |
| 主な役割 |
診療の結果と保険請求に必要な情報を記録する「アウトプット」 |
診療中の所見・会話・意図など、診療プロセスを蓄積する「インプット」 |
※歯科医師法第23条、歯科医師法施行規則第22条等の公開情報をもとに作成
主カルテが「診療の結果と保険請求に必要な情報をまとめたアウトプット」であるのに対し、サブカルテは「診療中の所見や患者対応の機微、スタッフ間の申し送りなど、診療プロセスのあらゆる情報を蓄積するインプット」と位置づけられます。
つまりサブカルテとは、主カルテに残らない診療プロセスの全体像を可視化し、医院の診療品質を支える「もう一つの基盤」なのです。
歯科医院におけるサブカルテの位置づけ
では、サブカルテが「診療プロセスを蓄積する情報基盤」であることを、データで確認してみましょう。
当社が実施した開業医を対象とする調査において、サブカルテを運用している医院(N=101)のうち、ご自身でも記入する開業医85名に「サブカルテに具体的に何を書いていますか」と尋ねたところ、上位には診療プロセスを構成するあらゆる情報が並びました。

最も多かった項目は「診療内容・処置の詳細」(82.4%)で、これに「主訴・患者の訴え」(72.9%)、「口腔内の所見・気づき」(71.8%)、「治療計画・次回の予定」(69.4%)が続きます。さらに「患者とのコミュニケーション内容」(65.9%)や「患者の個人的な情報(性格・好み・会話の内容など)」(48.2%)といった、まさに診療プロセスの中でしか得られない定性的な情報も多く記録されています。
これらは、診療の結果だけを記録する主カルテには現れにくい情報です。サブカルテは、診療中に飛び交うあらゆる情報を受け止め、次回の診療やスタッフ間の連携につなげるための「プロセスの記憶装置」として機能していることがわかります。
サブカルテは院内全員が常に使うプラットフォーム
もう一つ、サブカルテの特徴を考えるうえで重要なのが「誰が・いつ書いているか」という運用面です。

サブカルテ運用医院に「通常、サブカルテは誰が記入していますか」と尋ねたところ、院長ご自身が84.2%と最も多いものの、歯科衛生士が59.4%、歯科助手が22.8%、ご自身以外の歯科医師が16.8%、受付・事務スタッフも14.9%と、診療に関わる多様なメンバーが記入に関与していることが明らかになりました。
さらに、記入のタイミングを見るとその特徴がより鮮明になります。

最も多いのは「診療直後に患者が退出した後すぐに記入」(58.8%)で、これに「診療中にチェアサイドでリアルタイムに記入」(54.1%)が続きます。一方、「1日の診療終了後にまとめて記入」は9.4%、「翌日以降にまとめて記入」も2.4%にとどまっています。
つまり、サブカルテは「診療が終わってからまとめて書く事務作業」ではなく、診療の進行に合わせて、その場で、リアルタイムに書き込まれているということです。
診療に関わる多様なメンバーが、診療現場のあらゆる瞬間で同時並行的にアクセスする──サブカルテは、まさに歯科医院の現場で常に動き続けているプラットフォームと言えます。
サブカルテに求められる要件①:正確な情報をまとめて共有できるか
ここまで、サブカルテが「診療プロセスを蓄積する情報基盤」であり、「診療現場で多様なメンバーが常に使うプラットフォーム」であることを確認してきました。それでは、医院はサブカルテに何を期待しているのでしょうか。

サブカルテを運用している開業医101名に記録の目的を尋ねたところ、最も多かったのが「診療内容・経過の整理(自分が見返すため)」で88.1%、次いで「スタッフ間の情報共有/引き継ぎ」が66.3%、「患者対応に活かすため」が47.5%、「トラブル/クレーム予防(言った・言わない防止)」が38.6%という結果になりました。
これらの上位項目を踏まえると、サブカルテには「正確な情報がまとめられ、共有できる」ことが求められているのではないでしょうか。具体的には以下の3つが要件になるでしょう。
- 「情報の正確性」…診療内容・経過の情報(88.1%)が、抜け漏れなく事実に基づいて記録されていなければ、後から見返すにもスタッフへ引き継ぐ(66.3%)にも、ましてトラブルを防ぐにも役立ちません。
- 「情報の集約性」…診療内容・経過の情報(88.1%)/患者の訴え/コミュニケーション内容/申し送り等の目的で利用することから、診療プロセスだけでなくその患者に関わる多様な情報が一箇所に集約されている必要があります。
- 「情報の共有性」…受付からドクター、歯科衛生士、歯科助手へと業務が手渡されていく中(66.3%)で、関わるメンバー全員が同じ情報にアクセスできることが求められます。
実際にサブカルテを紙で扱う歯科医院だと、クリアフォルダ内に様々な情報が紙でまとめられていることもあり、サブカルテに求められる第一の要件は、この「正確な情報がまとめられ、共有できる」ことだと言えるでしょう。
サブカルテに求められる要件②:スピーディーな記録と閲覧が可能か
一方で、サブカルテに求められる要件はもう一つあります。「現場でのスピーディーな運用」です。
同じ101名に「サブカルテ運用において『本当はこうしたい』理想の状態」を尋ねたところ、興味深い結果が得られました。

最も多かった理想は「診療中にリアルタイムで記録を完了させたい」で、51.5%と過半数を占めました。次いで「過去の記録をすぐに検索・参照できるようにしたい」が32.7%、「記録の入力を簡素化・テンプレート化したい」が28.7%と続いています。
ここでわかることは、現場には2つのスピードに関するニーズがあるということです。
- 「スピーディーな記録」…記録を後回しにせず、診療中・診療直後にその場で素早く完結させたい(51.5%)というニーズです。先に見た記入タイミングのデータ(診療直後58.8%、診療中チェアサイド54.1%)と合わせて考えると、現場の歯科医師は既に「リアルタイム記入」を実践しつつ、そのスピードと利便性をさらに高めたいと考えていることがわかります。
- 「スピーディーな閲覧」…過去の記録を素早く検索・参照できるようにしたい(32.7%)というニーズです。前回どのような治療をしたか・今日の治療で何をすべきか・患者さんに関する重要事項(アレルギー等の禁忌情報等)を瞬時に把握して、その日の診療に活かしたいという意図に基づいています。
ここまでをまとめると、サブカルテには「正確/集約/共有」「スピーディーな記録/閲覧」という、合わせて5つの要件があります。本来は両立が難しいこれらの要件を、現場はサブカルテに同時に期待しているのです。
サブカルテのデジタル化がもたらす5つの変化──Dental eNoteで実現
ここまで整理した5つの要件を満たすために、これまでは人が多大な労力を払ってサブカルテを運用してきました。要件ごとに、デジタル化がもたらすメリットと、サブカルテを扱うデジタルノートの代表的ツール『Dental eNote』の対応機能を見ていきましょう。
① 正確:構造化されたフォーマットで「書き漏れ」「ばらつき」を防ぐ
紙のサブカルテは自由形式ゆえに、記入者によって情報の粒度や項目にばらつきが出がちです。デジタル化により統一された入力方法や帳票を用意でき、抜け漏れや記入ミスを防げます。
Dental eNoteでは、チェックボックスや選択入力などのフォーム部品で医院独自の用紙を元にしてデジタル化したテンプレートを簡単に作成できます。手書きの自由さを残しながら、記録のフォーマット統一というニーズ(前掲の図⑤より19.8%)にも応える機能です。

② 集約:写真・動画・PDFを1つのノートに集約する
紙のサブカルテに記録できる情報は、手書きの文字と簡単な図に限られます。デジタル化することで、口腔内写真、レントゲン画像、動画、PDF資料などを管理でき、患者や診療の情報を一箇所に集約できます。
Dental eNoteはノート上に写真や動画、PDF資料を貼り付け、その上に文字を書くことも可能。情報量を大きく拡張できます。

③ 共有:複数の部屋・複数のメンバーで「同時に」書き込み・参照する
紙のサブカルテは物理的に1冊しかないため、ドクターが書き込んでいる間は他のスタッフが触れません。デジタル化により、治療室・カウンセリングルーム・バックヤード・受付など院内のあらゆる場所で同時に参照ができます。
Dental eNoteではさらに、他社にはない「Share(シェア)」機能で複数人が同時に書き込むことができます。診療に関わる多様なメンバーが常にアクセスするプラットフォーム(歯科衛生士59.4%、歯科助手22.8%等が記入に関与)としてのサブカルテの運用がデジタル上で変わり、業務を劇的に変えます。

④ スピーディーな記録:紙感覚の手書きと専門用語予測で記入時間を圧縮する
リアルタイム記入を成立させるには、入力に時間がかからないことが大前提です。手書き感覚を保ったまま入力できるツールがあれば、診療中・診療直後にその場で記録を完結させられます。
①の入力フォームを活用することで記録を大幅にスピードアップできますが、それに加えて、Dental eNoteは紙とペンと同じ感覚で自由に手書きでき、歯科業界の専門用語15,000語を搭載した「Dental mazec(マゼック)」も標準搭載。手書きをで専門用語をスピーディーに入力できます。

⑤ スピーディーな閲覧:検索機能で過去の記録に瞬時にアクセスする
紙の場合、過去のカルテを探すには物理的にめくる必要があります。デジタル化により、検索機能で過去の記録にスピーディーにアクセスすることができます。
Dental eNoteは、それに加えて「ノートリンク」機能で重要情報を常にどのページでも表示できるため、そもそも「探す」ということなく、診療を始められます。

このように、サブカルテのデジタル化は紙による運用に起因する問題を解消します。そしてDental eNoteは、サブカルテに求められる5つの要件すべてを満たす機能を備えているだけでなく、デジタルでなければ実現できない、業務の変革をもたらします。
「3つのデジタルツール」を揃え本来の業務へ専念する
ここまで、サブカルテが院内のあらゆるメンバーが業務をまわすプラットフォームであり、院内の最も多くのメンバーに利用されるものであることを見てきました。サブカルテは、デジタル化したときの影響範囲は他のツールと比べても大きく、デジタル化の優先度が高いツールだと言えます。
ただし、サブカルテのデジタル化だけで医院全体が最適化されるわけではありません。歯科医院経営を支えるデジタルツールは大きく3つあり、それぞれカバーする業務領域もユーザーも異なります。
▼歯科医院のデジタル化を支える「3つの基盤ツール」
| 基盤ツール |
カバーする業務領域 |
主なユーザー |
| レセコン |
会計(保険請求業務) |
受付スタッフ・院長 |
| 予約管理システム |
集患(予約管理・受付業務) |
受付スタッフ・患者 |
| サブカルテ |
業務(診療プロセス全体) |
院内全員(ドクター・衛生士・助手・受付など) |
デジタル化の効果はそれぞれの業務領域で現れます。
医院全体の効率化とサービス性向上を実現するためには、3つのデジタルツールがすべて揃った上で、第2回記事で例示したようにどういう経営をしたいかによって3つのツールの使い方を組み立てる──というのが、現場のリアリティです。
人手不足が深刻化し、材料費・人件費が高騰する中で、「いかに歯科医師本来の業務に専念できる時間を確保するか」「いかにスタッフの生産性を上げ、離職を防ぐか」──これは、第2回記事でも触れた歯科業界共通の経営課題です。3つのデジタルツールを揃えて医院全体を最適化することは、その答えに最短距離で到達するための有力な選択肢になるでしょう。
まとめ
本記事では、なぜ歯科医院のデジタル化において「サブカルテのデジタル化」の優先度が高いのかを、調査データと事例をもとに紐解いてきました。ポイントは以下の3つです。
- サブカルテは院内全員が業務をまわすプラットフォームであり、デジタル化が現場に与える影響範囲は最も広い
- サブカルテに求められる「正確/集約/共有」と「スピーディーな記録/閲覧」の5つの要件は、紙では満たし切れない。デジタル化で紙での運用の問題点を解消することができる
- 歯科医院のデジタル化を支える基盤は、レセコン(会計)・予約管理システム(集患)・サブカルテ(業務)の3つ。3つ揃ってこそ医院全体の効率化・サービス性向上が実現する
第4回以降では、実際にDental eNoteを導入されている歯科医院様へインタビューさせていただき、デジタル化を進める際の課題や乗り越え方について掘り下げます。ぜひご期待ください。
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